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2009.03.05

紙の中の黙示録 -三行広告は語る-

紙の中の黙示録 -三行広告は語る- 佐野眞一 文芸春秋 1990年6月25日発行 1300円

を読んだ。

 三行広告というのは、新聞の下の方に載っている、数行のせまい広告のことだ。前からあのスペースで繰り広げられるさまざまな求人、謝罪、人捜しなどが気になってはいたのだが、本で説明してくれている人が20年近く前にいたわけだ。

 この本では、広告を表面的に分析するだけではなく、その広告を出す人、読む人の社会的な立場や問題まで掘り下げたものになっている。広告といっても、誘拐事件の犯人が要求してきた金を出す意図があることを示す広告や、外国人専用の平仮名広告などの存在は初めて知った。後者は、日本の労働問題と外国人労働者問題について広告から考察していっている。他にも、死亡広告の舞台裏や電柱広告の攻防、求職雑誌の台頭、電話帳広告の怪しさ、企業広告や墓地改葬広告、義絶告知など、広告を見れば世の中の裏側が全て見えるかのような錯覚を覚えてしまう。

 著者は、若者向け雑誌の投稿欄まで広告として見ていて、そこにあるさまざまな噂、さらには当時はまだ10万人ほどしか参加していなかったコミケにまで話題をひろげている。

 興味深かったのは、人捜しの広告だ。新聞のテレビ欄ちょい前くらいによくある。"孝、問題は解決した 連絡を 母"とかいうアレだ。父入院から始まって父死すまで続く10本ほどの連続広告を見ていると、今まで単に面白がっていただけの人捜し広告が、ひとつの家族の何年にも及ぶ愛憎のドラマのように見えてくる。

 この本は発行がインターネット普及以前のため、インターネット広告については一切語られていない。だが、昔の新聞広告と、現在のインターネットにはびこる…跳梁跋扈といった趣の広告群に差はあまりない。モノを売ろうとする人のイキゴミやなんとかごまかそうとする気持ちは、時代の流れとは別のところで深く濃く凝っているのかもしれない。

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» 社会の基底部の鼓動【書評:紙の中の黙示録 三行広告は語る】 [marginalia.jp:古本、読書、読書グッズの話題]
昨日はなぜか肩が痛くて一日中寝ていました。寝ようと思えば寝れるもんですね。 さて、久しぶりの書評です。著者は佐野眞一 。本書はモノマガジンへの連載に加筆修正を加えたものだそうだ。佐野の著作は読めば必ず「いろいろ取材してるなあ」と素直に感じるので、ついつい古本屋でも手にとってしまう。 さて、本書は三行広告のルポである。三行広告というとちょっといかがわしい感じがするが、本書で追うのもその類のものである。 佐野は、三行広告は「社会の基底部の鼓動をいち早く伝えている」と考えている。ま、わかるな。いまならSE... [続きを読む]

受信: 2010.05.04 20:04

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