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2009.03.24

仁丹は、ナゼ苦い?

仁丹は、ナゼ苦い? 町田忍・著 ボランティア情報ネットワーク・刊 1997年3月25日発行 1480円

を読んだ。こないだ読んだマッカーサーと征露丸の著者が、同時期に出した明治大正期の新聞に載った薬の広告を紹介した本だ。オビ(に見えるが表紙と合体している)にある南伸坊の、”昔の薬の広告は、賣れさえすればよいという了見で頗る愉快だ”が、この本の内容をよく表わしている。現在では薬事法があるから、軽々しく”効く”と言えないが、昔の薬ははるかにたのもしい。今現在売っているものとしては、浅田飴に熱さましの効果が謳われていたりする。仁丹ともなればもう何にでも効果があるかのように広告されている(笑)

 仁丹は広告をしまくっていたことで有名だ。新聞から雑誌から広告塔から、町名表記のカンバンまで大礼服ヒゲのおっさんが描かれている。そのおっさんが世界中からきた人々に仁丹を恵んでいる絵が描かれた広告は、今じゃとてもできないし、外国人に見せられない(笑) 明治後半というのはいかに勢いのある時代だったかがよくわかる。

 そんな森下博薬房(現森下仁丹)が出していた薬に、”毒滅”がある。広告のキャラクターはビスマルク。これが梅毒の薬だ。明治時代は梅毒淋病の薬が馬に食わせるほど出ていた。現在ほど性病に罹患する仕組みがわかっているわけじゃないし、コンドームも普及してない。よって、大勢の人が鼻がもげたり尿道がふさがっていたりしていたと思うと怖くなってくる。そこで毒滅をはじめとする薬の出番なわけだが… 広告を見ると、数日ものめば治ってしまいそうな書き方をしている。抗生物質とかがある現在でも日数がかかるのにいかなることか。実際には治っていなかったのではないか。それなのにこういう広告が野放しになっていたというのはそういう時代だったから…でいいのか。

 性病の薬のの広告に←”す約金返効無”などと書いてあることが多いのだが、本当に返金していたのだろうか? 広告だけでなんとかイイワケして金を返していなかったのではないかと想像するのだがはたして。

 仁丹は金言広告、というのをやっていた。広告の隅をワクで囲い、”金言 うんたらかんたら”、と昔の人が言ったちょっといいことが書かれている。しまいにはイェス・キリスト(原文ママ)まで登場する豪華さだ。教会とかは文句言わなかったか。

 大木五臓圓(薬の名前)の広告はもっとすごい。

 常に 日本人の体質に最も能く適応した大木五臓圓を服む人は 百度に近い炎熱の場合にもいつも達者で而も元気である

こうきた。100度近かったら煮えて死ぬんじゃないかと思うがどうか。華氏なのか? それだったら40度くらいだから丈夫な人は達者でいるのかもしれない。

 昔は今では売薬では存在しない、医師が処方した薬しか存在しないものがある。

子宮差込み薬 宮壮綿 津村順天堂

これは何だ。差し込んじゃうの? しかも作っているのは津村順天堂。現在もバスクリンを作っているあのツムラだ。

 性別に限定された商品の広告もある。婦人血塊てえのは生理か? ビクトリヤ月経帯はゴム製で大ヒットした商品らしい。

 男用のもいくつかある。

男のひみつ病 専賣特許 真空治療

などというのは"男のひみつ"、"真空"などとあるので、包茎治療器の類か。明治大正期からあったのだなあ。
 男用性病薬の広告は、ことごとく股間をおさえた絵の広告だ。わかりやすいねえ。

 毛生え薬の広告は、女性用のものが多い。毛が抜けた女性の絵が描かれた広告に、

毛のはへる薬 女用
けのはへること請合

などと書いてある。現在ではそんな広告はケフトルぐらいのものだ。本文にもあるが、昔の男は毛が生えなくなってくるのを気にしなかったのではないか。ていうか、女で毛が抜けてくるのはほっとくとまずい病気の可能性もあるので、まだ医師の診察を受けていない人はいますぐ受けた方がいいよ。

 昔は謎の…なんといえばいいか。貞操帯みたいな腰にぐるっと装着する器具の広告がかなりある。昔はすごかったのだなあ。広告上に踊るコピーを見ると…

←ムゴす治をぢ

←器療治腸脱
←す治玉ンキ大

←ウドンバ痔

大学脱腸帯
名薬でも治らぬ脱腸病(せんききん玉)

 大キン… せんききん… 本当に治るのか?

 現在でも子供がなかなかできずに苦労している人たちは多い。不妊治療だとか人工授精だとか、技術の進歩はそういった人たちに福音をあたえたのやもしれないが、明治大正期なら薬でなんとかする。

子はらみ薬
子のできる保証薬

保証までしてくれるとはすげえなあ。

 家庭用品の広告もいい味だ。

一滴!忌むべき悪臭を止め
一滴!恐るべき微菌殺す
どこの家庭でも無くてはならぬ
煙出し片脳油

この広告を読むと絶対効くと思えてくる。最近は水洗トイレの普及でわからん人もいるかもしれんが、昔はくみとりのトイレになんらかの薬剤をまき、ハエの発生などを抑えていた。小林脳行の煙出し片脳油は昭和40年代まで出ていた薬で、ビール瓶のような容器に白い薬が入っていたのを使用していた記憶がある。

 明治大正期の薬の広告をずうっと見ていると、現代の薬が失ってしまったパワーを感じる。もちろん、ショーヒシャホゴとやらの立場から言えば、適切でない効能をうたうのはよくないことなのだろう。だが、日本人の誰もが、日本が世界の一流国(笑)になりたい、と願い一生懸命がんばっていた時代の勢いがそこには見える。現代の我々に足りないのは、まさにその勢いではないかと、これらの広告を見て思った。

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